20~30代は専門性を高めることに意欲
20~30代の自己研鑽の内容は、上位から「専門科の診療に関する学習」(75.0%)、「資格取得のための準備・学習」(52.9%)、「研究(文献検索を含む)」(48.5%)となりました。
図1:自己研鑽で取り組んでいること(20~30代の医師68名の複数回答)
2020年11月に行った専門医のアンケート
(参考記事)では、20~30代は「現在専門医がなくてもこれから取得予定」という人がほとんどで、30代以降から専門医の取得率が上がることがわかりました。したがって自己研鑽でも自身の基礎となる専門科の学習や、資格取得のための準備・学習が多くの割合を占めるのも納得の結果となっています。
自己研鑽を行う理由には、以下のような回答がありました。自分自身の目標を達成するため、新しいことをどんどん吸収したい意欲が読み取れます。
- 専門性を高めて、海外留学したいから(男性/麻酔科)
- 将来もっと世の中に役立つ医療サービスを提供できるように、今は自分の能力を可能な限り上げたい(男性/脳神経外科)
- 日々の診療行為だけでは飽きて来るから(男性/精神科)
- 研究は純粋な興味が多いです。臨床業務は比較的dutyになっていますが、珍しい症例では可能性を模索して、症例報告になる可能性を考慮して精査するようにしています。(男性/内科)
自己研鑽の時間には個人差が
続いて、自己研鑽にかける時間や費用、自己研鑽に取り組むタイミングについて見ていきましょう。
まず、1週間あたりで自己研鑽にかける時間は「1時間未満」が8.8%、「1~5時間未満」が47.1%で、半数以上は、日常の診療に追われてなかなか時間が取れていないことが予想されます。
他方、1週間あたり10時間以上の時間を取っている人は全体の30.9%にも及びます。ちなみに、10時間以上かける40代は11.4%、50代以上は16.9%のため、20~30代は自己研鑽への意識が高い人が比較的多いことが読み取れます。
図2:1週間あたりの自己研鑽時間(20~30代の医師68名の回答)
自己研鑽にかける1カ月あたりの費用は、医学雑誌購入や学会活動などの費用を勤務先が補助することも珍しくないからか、1万円以上が約4割にとどまりました。個人の出費額はそれほど多くないように見えますが、同じ質問に答えた他年代では40代が21.9%、50代以降は31.1%。この結果を踏まえると、出費の多い年代と言えます。
図3:1カ月あたりの自己研鑽費用(20~30代の医師68名の回答)
また、自己研鑽に取り組むタイミングは「勤務時間後」が54.4%で抜き出ており、次に「勤務時間中」と「休日」が同率で30.9%でした。20~30代はオン・オフを問わず、学び続ける医師が多いことがわかります。
図4:自己研鑽に取り組むタイミング(20~30代の医師68名の複数回答)
「わかる」「できる」ことに成長を実感
最後に、自己研鑽に取り組んで良かったことを挙げていただいたところ、「新たな知識・スキルが身に付いた」(48.5%)、「自己成長を実感できた」(39.7%)が上位となりました。
「仕事の質の高まり」は20%台にとどまり、得た知識やスキルが仕事に活かされている実感にまでは至ってないようです。同じ質問に答えた40代では4割だったことを踏まえると、そうした実感は今後の実践を通じて高まっていくものと思われます。
図5:自己研鑽に取り組んで良かったこと(20~30代の医師68名の複数回答)
自己研鑽に取り組んでいて良かったと感じた、具体的なエピソードもご紹介します。
- 勉強会で習った身体所見に翌日出会えた(男性/内科)
- 症例報告や研究を行った分野の疾患は教室内で一番詳しくなった(男性/内科)
- 術中の麻酔のみでなく、術後管理まで考えて麻酔をするようになった。術後どれだけ患者さんの状態を良くできるかを考えて麻酔をするようになった。外国人の患者さんの対応ができた(男性/麻酔科)
- 積極的に講演会への参加や製薬会社主催の勉強会に参加したためか、若年だが講演会のお誘いがあり、演者と座長を務めることができた(男性/内科)
- 診療業務内容に直接関係しない趣味を続けて形にすることで、すぐに経済的な評価には結びつかないものの、職場その他の社会で印象に残りやすい存在となることができ、他の医師との差別化にもつながる(男性/精神科)
20~30代の自由回答は、自己研鑽を通じて成功・成長の実感が得られたものが多かったです。自己研鑽を続けることで、どのような変化があるのか、今後が楽しみです。