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専門医取得して良かった?医師たちのホンネ―専門医アンケートvol.1


2021年1月22日
記事KV

医師がキャリアを歩む上で、第一目標に置かれている「専門医」。多くの医師が専門医取得を選ぶ一方で、取得後のメリットを感じられない医師も少なくないようです。今回実施した「専門医」のアンケート(※)では、m3.comの医師会員1024名から回答を得ました。vol.1では専門医の取得実態、そして取得理由をご紹介します。

※2020年11月14~23日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施


少数派ながら積極的に取得しない医師も

はじめに、専門医資格を持っているかどうかを尋ねたところ、83.9%の医師が「専門医がある」と回答しました。「以前は専門医資格があったが、現在はない」(4.7%)、「現在、専門医資格はないが、これから取得予定」(5.1%)の医師と合わせると、90%以上の医師が専門医をひとつのキャリアパスにしているとわかりました。

グラフ1

図1:現在、何らかの専門医資格をお持ちですか(20~70代の医師1024人が回答)

なお、専門医資格の保持数は平均2.04件で、中には10以上の専門医を持つ医師も数名いました。

年代別で見ると30代から取得者が増え始め、40代で、ほとんどの医師が専門医を持つことには違和感がないと思います。その後、50代以降は専門医の更新を辞める医師が徐々に増えていきます。

グラフ1

図2:専門医の有無(年代別)(20~70代の医師1024人が回答)

「これまで専門医資格がなく、これからも取得予定はない」医師は20代でゼロだったものの、他の世代では少数派ながら数%いました。

専門医取得にこだわらない理由として、タイミングを逃してしまったという消極的なものもあれば、働く上で必要性を感じなかったという積極的なケースも見られます。

これまで専門医資格がなく、これからも取得予定はない理由
  1. 専門医取得の年代に大学医局と縁を切ったため取得できなかった(50代男性/内科)
  2. 当初から開業志向だったので、必要性を感じなかった(50代男性/糖尿病科)
  3. ちょうど専門医制度が始まった時期に研修を行った世代。今まで医師免許を持っていた人には無条件で資格を与えることに疑問を感じた。また、地方にいるのでレアな症例を集めるのは困難。1つのサマリーを名前だけ変えて提出しているのを見て嫌になった(50代男性/内科)
  4. 学士入学で30歳を超えて入学したので、実臨床に出るのが先だったし、そういう中でいろいろな専門科を習得し、総合診療ができているので専門医資格は今でも必要ないと思う(60代男性/内科)
  5. 研究や留学で資格を取る時機を逸した(60代男性/脳神経内科)

一方で、専門医資格がないことで困ったという意見も寄せられました。

  1. アルバイト先の選択がやや減る(40代男性/小児科)
  2. 専門医資格がないと治療や処方薬剤に制限がかかる場合がある(40代男性/外科)
  3. 出世が遅れた(60代男性/腎臓内科)
  4. 自己紹介の時に箔がつかない(60代男性/精神科)
  5. 所属医療機関が研修認定施設になれないので研修医にアピールできない(60代男性/脳神経内科)

日常診療では専門医がないことで、特段デメリットを感じていない人も多くいました。上記のように、専門医保持者に比べれば選択肢がやや狭まりますが、現時点では「まったく仕事にならない」など、致命的に不利になることはないようです。

専門医取得は自身と後輩のため

多数派を占める専門医保持者は、それぞれどのような理由で専門医を取得したのでしょうか。

以下、グラフでは「自身の知識・スキルの向上のため」が最も多い51.5%で、次に「後輩医師の指導や研修認定施設に必要なため」(27.1%)、「上司や同僚など周りの医師が取得していたため」(17.3%)と続きます。

多くの医師が専門医資格をひとつの区切りとして、勉強をしたり、研鑽を積んだりするきっかけにしているようです。また、指導医・専門医は教育施設の認定にも関わるため、取得・維持が欠かせないようです。
グラフ1

図3:専門医資格の取得理由(20~70代の医師1024人が回答、専門医がない医師は除外)

いざ取得をしようと思っても、日常診療と試験準備の両立には多くの医師が苦心したようです。

試験勉強


  1. 簡単なはずなのに筆記試験に5回落ちた。さすがに口頭試問と実技は一発合格でしたが(50代男性/麻酔科)

  2. 取得する頃、忙しい病院で働いていた。しかも受験する専門医試験とは別分野に流れ始めていたので、試験勉強の時間がなかった。一応勉強して問題集も解いてみたが、分野によっては医局でそうはしないようにと教育されたことが正解になっていた(50代女性/循環器内科)

  3. 40代になって専門医を取得したので、若い時と比べると暗記力も落ち大変だった(40代男性/外科)

症例集め


  1. 血液専門医は、筆記試験前の申請時に15症例のサマリー(考察含む)の提出が必要なので、日常診療を終えてから、文献を漁りながらサマリーと考察を書くのが大変だった(40代男性/血液内科)

  2. 症例に規定の期間があり、3人の産休・育休中に消失してしまいそうだったこと。赤ちゃんがいる時に、専門病院に通うのが大変だったこと(50代女性/糖尿病科)

受験手続き


  1. 移行期間のため、周りの医師が書類審査だけで専門医を取得しているのに、自分は留学などの関係で書類審査に間に合わず、通常通り試験を受けて専門医資格を取得しました。合格したので良い思い出ですが、当時はやるせない感がありました(40代男性/脳神経内科)

  2. 学会や大学関連施設に一定期間の在籍が必要で、指導医のサインが必要だったこと。こんなことよりも、もっと本人のスキルや、知識を臨床に応用できる力などを評価できると良いのにと思いました(50代男性/消化器科)

  3. 昔、喧嘩した部長に頭を下げて印鑑を押してもらいに行ったことが一番つらかった(50代男性/小児科)

取ったものの、メリットは…?

晴れて専門医を取得した後のメリットは、取得理由の上位にあった「自身の知識・スキルの向上」(28.2%)、「後輩医師の指導や研修施設認定に活用」(22.7%)が同様に上位に入りました。しかし、いずれも30%以下にとどまり、最多を占めるのは「メリットは感じていない」で33.9%となりました。

グラフ1

図4:専門医資格の取得メリット(20~70代の医師1024人が回答、専門医がない医師は除外)

なお、デメリットとして、以下のような回答が得られました。

  1. 受験料、更新料、学会参加の旅費などで費用がかかる
  2. 学会参加やポイント集めなど、時間的な負担がかかる
  3. 受験、更新の手続きが煩雑
  4. 給与に反映されない

日常的にメリットが感じられないにも関わらず、取得・更新ともに時間的・経済的負担がかかることをマイナスにとらえる医師が多くいました。中にはメリットよりもデメリットが上回ると訴える医師もおり、今後の改善が求められそうです。

vol.2では専門医取得・維持にかかる費用と、その費用対効果についてご紹介します。