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専門医資格のない医師、周りはどう評価?―専門医アンケートvol.4


2021年2月12日
記事KV

医師の「専門医」について、アンケート(※)から実態を調査する本シリーズ。最終回では専門医資格の有用性や今後の課題についてお伝えします。

※2020年11月14~23日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施


専門医、約6割が医師評価の「参考になる」

更新を止める「専門医断捨離」に6割の医師が共感する一方で、ほぼ同数が更新し続けたいと考えている専門医(vol.2vol.3参照)。医師の間では専門医の有無をどう捉えているのでしょうか。そこで、専門医資格は知識・スキルの判断材料になるかどうかを聞いたところ、57.6%の医師が「参考になる」と回答しました。

一緒に働かなければわからない点は多々あるものの、現時点では他に参考となる客観的指標がないため、初対面の場合は、専門医の有無が第一印象に影響することが多いようです。

グラフ1

図1:専門医資格の有無は、医師の知識・スキルの判断材料として参考になると思いますか(20~70代の医師1024人が回答)

とても参考になる


  1. 学会発表や論文作成、試験によりある程度のレベルの知識が担保される(50代男性/麻酔科)

  2. もし自分が患者だったら、専門医も取れない(取らない)医師に診てほしくない(50代男性/麻酔科)

  3. 資格更新のために難治症例の診療が必要になり、知識と技術の向上に有用(70代以上男性/婦人科)

まあ参考になる


  1. サブスペシャルティに関しては、専門医を持っている人に聞くほうが、学会にも行き、症例も多いためか、知識が最先端で豊富(30代女性/小児科)

  2. 勉強はできるが、実技がさっぱりな専門医がいるので、参考程度にしかならない。ただ、少なくとも何年も同じ専門領域で仕事しているのに、資格がない人は何か問題があるのではと勘ぐってしまう(40代男性/循環器科)

  3. 取得時に手術件数や論文数が必要なので、手術が下手であっても経験を積んでいることが示せるし、大した論文でなくとも論文を書いたことがあればリサーチマインドを持っていたことが示されるから(60代男性/呼吸器外科)

どちらとも言えない


  1. 昔は試験などなく、書類審査だけで通った時代がある。その時に医局の事情でただ取っただけで、本来専門として研鑽もしていないのにただ単に維持しているだけの人がいる。専門医だからといって今の技量を反映しているわけではないと思う人もいる(30代男性/糖尿病科)

  2. 医師の大半が専門医を取るようになり、知識やスキルを反映しているとは言い難いです(40代男性/精神科)

  3. 手技的なことや最新の知識などは不明なため(50代男性/脳神経外科)

あまり参考にならない


  1. 患者も医療者側も専門医資格の有無は重要視していないと感じる。専門医資格があると一定の安心や評価の材料になるかもしれないが、実臨床での診療能力は専門医資格の有無には相関しない。専門医資格があっても実臨床で使えない医師も、専門医資格がなくても知識や技術、判断能力に優れた医師もたくさん見てきた(40代男性/血液内科)

  2. 専門医を持っている医師が、自分のサブスペシャル領域しか見なくなっていて、科の一般的な診察ができなくなっていることがある(40代男性/小児科)

  3. 認定方法、更新方法が知識・スキルと関係ない(60代男性/消化器内科)

まったく参考にならない


  1. 学会に長くいれば自然に取れるから(50代男性/科目未回答)

  2. 資格を持っていても、そのレベルが色々で信用できない(60代男性/産婦人科)

  3. 名誉を重んじる旧来の通過儀式のような気がします(70代以上男性/内科)

多様化する専門医への価値観

専門医を取るかどうか、そしていくつ取るかは医師の判断に委ねられているため、1つの道を極める医師、複数の専門医を掛け持ちする医師など、多様な選択肢があります。

今回、取得すべき専門医資格に関して質問したところ、「基本領域に加え、サブスペシャルティ領域の専門医も取った方が良い」と回答した人が最も多い46.9%でした。しかし、次点は「専門医資格が必要かどうか疑問に感じる時がある」で18.9%と、以前は取ることが当たり前だった専門医の価値観が揺らぎつつあることがわかりました。

グラフ1

図2:取得すべき専門医資格についての考え(20~70代の医師1024人が回答)

曲がり角にある専門医の論点

最後に、専門医資格について、さまざまな意見を述べていただきました。現制度の課題が浮き彫りになりましたので、今後の議論につなげていただきたいと思います。

専門医資格の在り方について


  1. 学会発表等、実臨床に役立たないことは専門医資格取得には必要なく、実臨床がより充実するような専門医形態にすべきである(60代男性/内科/専門医なし)

  2. 厳しい割には中身が無い。資格取得するために勉強した者と無資格者とで現実に差がほとんどない。それゆえ勉強しない人達が出てくる。専門医資格は、きちんと研修を受けて一定以上の能力を有することの証明であって欲しい(70代以上男性/産婦人科)

  3. 実力さえあればキャリアパスや出自に関係なく、何歳になっても取得できるのが本当のあり方ではないのだろうかと思う(50代男性/内科/専門医なし)

  4. 施設認定による縛りが厳し過ぎる。これ(X年以前の勤務歴は研修に含めません、など)が原因で受験機会を失った専門医資格もある。また、専門医の方が余程知識がない、という場面に出会うこともあり非常に疑問(40代男性/糖尿病科)

  5. 一般的に専門は1つではないのですか?3つも4つも専門医を持っているのは自己満足以外の何物でもないと思います。専門医のステータスを高めるならば、すべての専門医に更新試験をすべきです(60代男性/内科/専門医なし)

  6. 専門医資格が機構や学会の集金手段となっている現状にとても困惑しています。質の担保が持続的にできていない制度なのだから「更新」制度はやめるべきで、資格として残したいなら、医師免許との整合性から「永久」資格とするべきではないでしょうか。それがおかしいなら、医師免許も5年ごとに更新するべきですよね。そもそも学会は学問を発展させる機構であって、実臨床の専門医制度に関わるべきでは無いと思います(50代男性/内科)

  7. これからは専門医が無いと認められない医療行為や、取れない保険点数などが増えていくだろうから、専門領域を絞って的確な専門医は持っておくべきだと思う。私自身は専門医を持っていないことに、後悔はしていないと言うとウソになる(50代男性/糖尿内科/専門医なし)

専門医資格の優遇について


  1. アメリカでは、専門医の資格がないとその分野の治療にあたれないことがあります。日本では専門医資格を取っていても、職域や地位、日常診療にはあまり影響がない印象があります。例えば、抗生剤を投与するときは、感染症専門医の許可および監督下がないと実施できないとかにしないと、専門医でない人間が治療を行ってしまいます。医療の質を担保するために、最低限、専門医の許可、監督下でその専門領域の治療を行う体制にする必要があると思います(40代男性/内科)

  2. 専門医資格=その領域での技能認定であれば、診療報酬などに反映すべきだと思います。また取得にかかる費用は、勤務医なら必要経費となることが少ないので、税制上も優遇処置がほしいです。日夜勉強をして、スキルアップし続けることを医師法で義務付けるなら、そのコストは個人負担ではなく、義務を課した側にも負ってもらいたいと思います(40代男性/小児科)

  3. 専門医取得や継続にかかる費用は高すぎる。専門医の診察や手術に対し、病院・個人に対する診療報酬が増える訳ではないのに、医師各個人に費用を負担させるのはおかしい。元々国家試験を受け医師になる資格を取っている。それ以上に専門知識・技術を磨き国民に奉仕する医師を増やしたいなら、そのためにプライベートな時間を削って時間と労力を注いで努力・研鑽した医師の費用は国費で賄い、資格が取れなかった医師のみにかかった費用を支払わせればいい(60代女性/産婦人科))

2018年に新専門医制度が始まり、2021年には新専門医の第1世代が生まれることになります。専門医の質を従来よりも担保するため、取得・更新の方法は刷新。たとえばサブスペシャルティ領域を含めた研修期間が最長6年になるほか、更新に試験や診療実績が求められるようになる見込みです。そのため、医師にとっての専門医資格の在り方も変わるでしょう。今回の記事が専門医資格について考えるきっかけになれば幸いです。

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