【研修病院選び方 御法度・第10回】失敗しないER型救急研修 | m3.com 研修病院ナビ

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失敗しないER型救急研修

 前回に続き今回も「ER型救急研修」について検証していく。「Type1. 各科当直医と研修」はこちらを参照されたい。

Type2. 救急医+各科当直医+研修医

 このタイプの当直では救急を専門とする医師がおり、さらに内科系当直医と外科系当直医が設けられている。多くの場合、救急医は救急車だけを診療し、Walk-inの患者は研修医と各科当直医で診療する。少しややこしいが、ここで言う救急医とは日本型の集中治療や重症診療を得意とする医師のことだ。彼らは日常の診療でも救急車で搬送される患者のみ担当している。

 研修医は当直時、救急搬送される患者のファーストタッチをすることはなく、あったとしてもお手伝い程度のことが多い。


Type3. ER型救急医と研修

 ER型救急医は「入院治療を全くしない」、「少しはする」、「ときどきする」といったタイプに分かれている。そしてER型救急は、病院の地域との結びつきや立ち位置によって診療スタイルが柔軟に変わり、それぞれ少しだけやり方が違うのだが、ER型救急医が専門とし、得意とするのは患者の重症度を見抜く鋭い診断力で、その点はどのスタイルでも一貫している。診断力を専門とするには、他人に教えることができるほどの疫学に基づいた幅広い知識と、多様なバリアンスをもった診療経験が必要とされるため、ER型救急医から指導を受けることができる研修医は非常に幸せものだと言えよう。

「真のER型救急体制かどうか」が何故大事なのか

 ER型救急医が教えてくれるのは、患者の年齢性別と主訴と言った患者背景から見抜く方法、主訴とバイタルサインから見抜く方法、病歴から的を絞った身体所見の摂り方など、診療のベースとなる病歴聴取・所見から患者の置かれている環境因子にまで注目したものだ。とあるER型救急医の先生は「名探偵コ◯ン」と表現していたが、研修医が2年間で学ばねばならないのは非典型的な症状に隠された病を見抜くことだけでなく、病を診るのではなく患者を診ることであり、医療の中心は人間一人一人と向き合うことにあるのだと気づかせてくれる。

 別にER型救急医じゃなくても、「総合診療や一般内科医でもそれぐらいやってるわい!」と怒られてしまいそうだ。しかし、あくまでも研修医が限られた時間の中で、最も責任を持たされて、多くの機会に巡り会えるのは夜の救急外来をおいて他にないのが実情だ。よりより研修を受けたいと考えている学生は多いだろうから、研修先に真のER型救急体制があるかないかを判別するのは切実な問題となる。

まだまだ少ないER型救急

 とは言え、ER型救急をやっている病院はまだまだ少ない。ER型救急医は全国に500名ほどしかいないと言われ、1つの施設に複数人が勤めることを考慮すると彼らが常勤の病院など数えるほどしかない。研修医のため、ひいては日本の未来の医療のために、もっともっとER型救急医が増えて欲しいのだ。

2.5次救急施設と外傷

 ここで前回触れた救急医療体制について補足をしておきたい。重症者を診る3次救急施設と一般入院を診る2次救急施設との間に、通称“2.5次”というのがある。これはあくでも通称で正式にはそんな言葉はないのだが、2次救急病院の中でもICUがあり、救命救急センターの指定は受けていないが頑張っている病院がある。この中には重症外傷の受け入れはできないが、内科系の重症者(急性心不全、心筋梗塞、脳卒中)なら、どんな症例でも受け入れることができる施設もある。

 何が言いたいかというと、2.5次病院の中には外傷を診る機会がある病院とない病院があるということ。実際に研修を受けないと分からないかもしれないが、外傷患者の搬送の有無というのは外科領域(とくに整形外科)の経験上大きな違いとなる。外傷は金輪際診るつもりはないと心にキメている人は別にいいのだが、外傷診療も初期対応(PTLS:Primary-care Trauma Life Supportの実践を学ぶことができる)ができるようになりたいと思うのであれば、そこもチェックして研修先を選ぼう。

救急で選ぶな!?研修病院

 さて、ここからはこれまでと全く反対のことを言おう。散々ER型救急のある病院での研修がイイ!と絶賛しておきながら、それを覆したい。研修病院を選ぶとき「救急がイイから絶対にイイ!」は御法度である。救急医の私が言うのだからマチガイナイ!?

 正確に言えば、救急だけで選んではいけないよ!ということだ。なにせ研修ローテーションでは必修科があり、その大半は一般病棟研修≒内科研修である。すなわち病棟での研修がしっかりしていないと、両手を挙げて喜べないのだ。病棟研修の良し悪しは、どのような目標が設定され、それがどのように評価されるのかが特に大切だ。なにせ研修医が病棟業務をしている間、指導医は外来をしていたりバイトに行っていたりと不在であることが多く、丸一日つきっ切りで指導を受けられることなんてないのだ。いないならいないで研修医に病棟患者の管理を丸投げせず、その日、何を目標にすべきかを具体的に責任を持たせつつ段階的に提示し、達成度を評価してもらえるような環境でなければ、研修医は何もしなくても一日が過ぎてしまうのだ。ただ日々の業務をこなすだけでローテーションが終われば何も残らない。

著者略歴

安藤 裕貴

所属:名古屋掖済会病院救命救急センター(2016年11月現在)

「人の命は地球よりも重い」そんな命を支える人になりたいと、医学を志した初心を忘れられず京都大学工学部中退。再受験にて富山大学医学部入学。平成20年、同卒業。初期研修中に「研修病院選び方御法度」(三輪書店)を出版。救急の現場で研修医指導をしながら、よりよい研修とは何か探り続ける。

安藤医師

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