【研修病院選び方 御法度・第15回】アドバンスド研修病院選び(1) 感染症の訓練ができる病院を探せ! | m3.com 研修病院ナビ

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アドバンスド研修病院選び(1) 感染症の訓練ができる病院を探せ!

アドバンスド研修病院選び(1)

 これまで、“研修の目的が明確且つ未来を約束してくれる病院を選べ!“に始まり、“大病院だから“、”救急が良いから“、”市中病院だから“、“研修プログラムが自由に組めるから”などは「研修病院選びの御法度である」と述べてきた。これらは、「自分がなりたい医者になるための研修病院選びにおける最低要件を示した」と言い換えてもよいかもしれない。

 まぁ、考えてもみればほとんどの医学生は、高校を卒業して社会を経験することもなく大学に入り、上もあれば下もある、理不尽なことばかりで思うままにならぬ世の中の辛さ、厳しさを知らずに医者になるわけだから、医学部を卒業するまでは何にも煩わしいことを考えなくてもよかったわけだ。それが卒業と同時に社会に無理やり押し出され、大学で学んだ社会で生き抜く術は ― せいぜい部活動の上下関係ぐらいで、しかもそれが社会の全てだぐらいに思っている ― ほとんどなく、知識と技術だけを学べば医者になれると思って病院を選ぶわけだからマッチングは大変である。しかもその病院を選ぶ根拠も、同じく医者という狭い社会のことしか知らない先輩からの意見に左右されやすいというから、最低限押さえるべきポイントも多岐に渡ってしまう。

 そこで今回からはもっと研ぎ澄まされた研修を期待できる病院の選び方をお伝えしたいと思う。本邦初公開なので乞うご期待!

感染症の訓練ができる病院を探せ!

 臨床を学んでいくと、どんな分野に進んでも必ず出くわす疾患群がある。救急対応については随分述べてしまったので割愛するが、その次に重視して欲しいのは心臓カテーテルの件数でもなければ、オフポンプバイパス術の件数でもない。感染症診療の訓練ができる病院を探して欲しいのだ。

 ここで言う感染症診療とは「アジア帰りの発熱と皮疹と結膜炎ならチクングニア熱だね。」という世界のものではない。肺炎、尿路感染症、胆嚢炎、蜂窩織炎といったCommonでしっかり(?)細菌感染したものから、副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎、胃腸炎といった「風邪ですね」とあまり何も考えずに帰宅させてしまいがちな疾患、他にも髄膜炎、敗血症といった重症感染症群の診療を指す。

私は整形外科医になりますから関係ありません?

 これらはどの診療科に進むことになっても初期対応や適切な対応(患者教育も含めて)が必要になってくる。それなのにそれなのに、感染症に対する訓練を重視した研修病院は“雨夜の星”非常に少ないのだ。「私は整形外科に進むんで骨しか眼中にありませんから関係ありませんので」と思っていても、患者さんの中には大腿骨頚部骨折や圧迫骨折の入院中に脳梗塞後遺症で誤嚥性肺炎となる患者もあれば、縫合したところからの蜂窩織炎になってしまった患者など、必ず感染症の患者には遭遇するのだ。日本は高齢化社会となって40年以上、超高齢社会となって7年になるのだそうだが、外来にも病棟にもあふれているのは易感染性宿主の高齢者なのだ。

感染症?いい薬があるんだから簡単でしょ!?

 「風邪をひいた?抗生剤を処方しておきますね」という教育は昨今はさすがになくなっていると思いたいが、「広域の抗生剤があるんだからプライマリケアの感染症なんて簡単でしょ!?」と思っている人はまだまだ多いようだ。「肺炎だけど元気そうだからクラビット出しておきますね」という声は日本中から聞こえてきそうだ。少なくとも近隣の診療所や病院からの紹介状で処方されているのは経口第三世代セフェムやニューキノロンばかり。広域の抗生剤を無秩序に使い続けることによって、世の中で耐性菌が年々増えていて、やがて抗菌薬を使用することができなくなる時代が来ると憂いている人がどれだけ臨床家の中にいるだろうか。…ほとんどいないのだ。広域の抗生剤を使うのは、頭の中での処理がとっても簡単で済む。それを使わないようになると、「何が適切か」をものすごく考えることになる。基礎疾患によっては頭が沸騰しそうになることもある。とっても訓練の必要なことなんだけど、これを教えられる人がまだまだ少ない。初期研修で変なクセがついてしまうと感染症診療において何も考えない思考停止ドクターになってしまう恐れさえある。でも悲しいかな、これが日本の教育の現状なのよね。

そこに染色室はあるか?

 とはいっても、どこの病院が感染症診療をまともに教えてくれるかなんてなかなか分かるものではない。有名ドクターがいるならまだしも、無名でも頑張っている先生たちだっている。そんな病院には特徴があって、救急室にグラム染色をするスペースを作ってあることが多い。救急外来で肺炎患者が来れば、喀痰を採って自分で染めて顕微鏡をのぞいて菌を予想するのだ。そして、それを元に最初に使う抗菌薬を考える訓練をする道場がグラム染色室なのだ。自らグラム染色をするドクター、つまり感染症診療に熱いドクターがいるから、わざわざ救急室の一角に染色室を作っているのだ。もしグラム染色室がなくても検査室に自分で検体を持って行って、自分で染色し顕微鏡をのぞくことをオススメする。技師さんとも仲良くなっておくと、染色や乾燥のコツから所見までいろいろ教えてくれる。戦う相手が肉眼で見えれば患者さんと一緒に戦う闘志が湧いてくるじゃないか!

 ぜひとも研修病院選びの基準の一つに「感染症診療はどうか?」を入れてみて欲しい。

ポイントの整理

  • (1)初期研修は感染症の研修に注目せよ!
  • (2)感染症の中でもcommonな感染症研修に強い病院を探せ!
  • (3)いつでも使えるグラム染色室の有無が1つの目安

著者略歴

安藤 裕貴

所属:名古屋掖済会病院救命救急センター(2016年11月現在)

「人の命は地球よりも重い」そんな命を支える人になりたいと、医学を志した初心を忘れられず京都大学工学部中退。再受験にて富山大学医学部入学。平成20年、同卒業。初期研修中に「研修病院選び方御法度」(三輪書店)を出版。救急の現場で研修医指導をしながら、よりよい研修とは何か探り続ける。

安藤医師

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