【研修病院選び方 御法度・第19回】モアアドバンスド研修病院選び

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モアアドバンスド研修病院選び

とうとう本稿で最後となる。学生のみんなには正しいことを正しい、理不尽なことを理不尽と言うことができる医師になって欲しい。「医師を育てるとは何か」ということがこれまで明文化されたことはなく、「どんな医師になって欲しい」ということが明確に定義されたこともない。何かと奥ゆかしい日本において、この問題はとても難しいことだ。何かの基準を設ければ「他人と比較されるのは嫌だ」と逃げ出し、相互評価となると「よく思われたいから他人を悪く評価できない」と、適正さや公平さのバランスを欠いた感情で動こうとしてしまいがちなのが我々人間だ。
人間が本能や感情に動かされない理性的な生き物であるとはとても思えない。理論云々の前に、あふれる情熱や気概というもので人は動き動かされ、環境は変わる。免許はただの表札であり、「医師免許を取れば医者」なのではない。その前に「立派な人間」の免許をもらわねばならないのだが、そんなトレーニングをする機会は残念ながらもうない。あら、残念。初期研修のわずか2年間で医師として、社会人として周囲の影響を多分に受けてしまう環境になってしまうのだ。あぁ恐ろしい。研修病院選びとはとても難しいことなのだ。

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議論の中心はなにか

最後にアドバイスしておきたいのは 「議論の中心に患者はいるか?」 ということだ。「システムそのものの構築が曖昧で虚飾が多い」のがまだまだ現状の初期研修については、いろいろな議論があちこちでなされている。「研修医のニーズに合わせた大胆なプログラム!」と言えば聞こえはよいが、それは道案内のできない人に道を聞いているようなもの。はたしてそれで、将来どの道に進んでも、周囲の人を医療という側面から支えることができるようになるのだろうか。“研修医を集めるため”という 病院の都合で作られたプログラムや研修のシステムは、そのうち化けの皮が剥げて意欲を持った学生には見向きもされない だろう。いや、そんなものに我々は騙されてはいけないのだ。

救急隊を冷たく扱っていないか

病院見学、ことに救急を見学する場合は 研修医と救急隊のやりとりを聞いてみるといい 。患者さんの状況を説明する救急隊はほとんどが隊長クラスの人で、年齢は研修医からすれば一回りも二回りも上である。
そんな彼らに研修医がどんな態度で接しているかを見てもらいたい。忙しいときは人間誰しも集中力を失い、思ってはいけないことを思い、言ってはいけないことをついつい言ってしまう。日頃の心がけが訓練されていなければ、夜中の3時にかかりつけでもない酔っぱらい患者を搬送する救急隊から笑顔で話がきける人間はなかなかいない。救急隊だってこんな時間に、言うことを聞かないであろう酔っぱらいを搬送して申し訳ないと思っているのだ。搬送せねばならない救急隊はこの場合弱い立場にあるのだよ。

あとがき

最後になるが学生時代に感じた 「これっておかしいな?」と思うことを大事にして 研修病院選びをサバイバルしてもらいたい。大人の対応で日本人らしく黙っているのもいいが、「おかしいな」と思ったことを声に出し、相手の立場を崩すことなく伝えられるようになって欲しい。そうした蓄積が日本中のあちこちでおこることで、地域の研修、日本の医師教育をほんの1ミリずつ変えていくことになり、ひいては少しでも病気とその周辺で困る患者さんが減っていくことになるのを期待したい。