【研修病院選び方 御法度・第13回】「自由な研修プログラムです」は御法度 | m3.com 研修病院ナビ

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研修病院選びかた御法度その(4) 「自由な研修プログラムです」は御法度

 「2010年から厚生労働省が指定する研修プログラムの中身が変更になった」。学生にとってはどこの病院に行っても聞かされることで、「どこの病院のプログラムもそんなに変わらんわ!」と思っていることだろうが、簡単におさらいしておく。

  • 1.必修は内科6ヶ月以上、救急3ヶ月、地域医療1ヶ月以上
  • 2.必修のうち地域医療は2年目で行い、他は1年目で行う
  • 3.選択必修科目として2科目以上をそれぞれ1ヶ月以上研修
  • 4.選択必修科目とは外科、麻酔科、産婦人科、小児科、精神科

 

 この4つをまとめると「必修のしばりは全部で12ヶ月あって、地域医療研修は2年目でやってね」となる。残りの12ヶ月は自分で自由に選んでね!ということらしい。多くの研修病院がこのしばりのもと研修プログラムを組んでいるのだが、ハッキリいって大した違いがない。それなのに「うちの病院の研修プログラムは、個人個人に合わせた自由なプログラムです~」と宣伝してくるから「はぁ?」となる。

 お上(厚生労働省)の決めたことにイチャモンを付けたいところだけれども、これに素直に従って、何も考えていないような研修プログラムの病院が山ほどあるから気をつけていただきたい。

どの科からスタートしてもいいの!?

 プログラムのどこを見れば良いかというと、まずはローテートする診療科を見てほしい。これが研修医ごとにバラバラで違っている病院、つまり何科からスタートするか決まっていない病院は何も考えずにプログラムを作っていると言ってもよい。

 医師国家試験に合格したとはいえ、4月初めの研修医は何もできない。医師免許が届くのが5月ごろということもあるが、実質的に何もできない。全くお役に立てないのだ。なにせ大学6年間の教育カリキュラムの中で、自分で責任を持って患者を担当し、自分の考えで初期対応をしたり、入院患者の方針を決めたりしたことがない。薬の名前だって一般名を少し知っているくらいで、実際にその病院で採用されている商品名を知らない。実戦経験がないのだから、まったく使い物にならないのだ。だから、どの科からスタートしてもいい研修プログラムなんて医療的な安全面から考えてもナンセンスなのである。

新人研修の中身とは?

 通常、社会人になると新人研修という期間がある。だいたい1~3ヶ月ほど行われることが多く、その間にみっちりと社会の基礎を叩き込まれるのだ。なぜか大声を出したり、マラソンしたり、穴を掘らせたりと変わった研修もあるようだが、ビジネスマナーや挨拶の大切さ、敬語の使い方、電話の応対の仕方、報連相(報告・連絡・相談)の大切さ、身だしなみ、コミュニケーションなどなど、とても2日や3日で終わる内容ではない。(どれも大学では教わらないことばかり)

 病院に勤めるのであれば、当然身につけるべきカルテや電子カルテの扱い方、ナースが習っていて医者が習っていないこと(患者の移乗のさせ方って医学部では習わないんだなぁこれが)、注射器の扱い方、薬剤の詰め方、医療機器の使い方(シリンジポンプの操作など)、器材の名前や出し入れの仕方、保険病名入力や検査オーダーの出し方、行った処置の入力などなど、専門的な内容が山ほどある。心肺蘇生のBLSはもちろん、ICLSや外傷初期診療のPTLS*だって最低レベル身につけておかないと使いものにならない。

 医者になると周りからは「先生、先生」と言われて調子にのりやすいから、それ以外の職種の人たちがどんな働き方をして、どんなことに苦労しているのかを経験することも大切だ。…そう、新人研修にはどうあっても1ヶ月はかかるのである。どの科から始まってもいいのなら、その科のローテート期間が短くなるから中途半端になってしまう。プログラムの中に新人研修期間が盛り込まれて当然なのだ。

* PTLS=Primary trauma life support。外傷の初期対応を学ぶコース

ローテートする順番が決まっているプログラムを選べ!

 プログラムで次に注目するのはローテートする順番だ。診療科というのは少しずつ他の診療科とオーバーラップしているものだ。たとえば、脳外科である程度頭部CTの読み方を教わってから神経内科で細かく勉強することができれば学習効果は高いだろうし、神経内科の指導医も、何も知らない相手ではなくある程度知識のある研修医の指導となるため教えやすくなる。脳外科終了時にテスト及び解説を行うことによって知識の保証をしていけば、なおさらこの連携はうまくいく。

指導医は困っているのだ

 知らない人が多いだろうが、指導医というのは実は研修医に何を教えたらよいかと悩んでいる。教えるからには、相手が何をどこまで分かっているかを把握しなければならないからだ。「先生、その話また聞きました」という顔をされたら冷や汗タラリである。この把握が実に難しい。診療科のローテート順が決まっていたら、その問題もある程度解消される。研修医の名札などにこれまでローテートした科が明記されていればもっと助かる。軍隊なんかでは階級章の他に記念章というのがあり、これまでにどんな功績があったのか、どんな経験をしてきたのかがわかるようになっているそうな。

 従ってローテートする診療科にある程度しばりがあり、順序が明確になっているプログラムは、本当に研修や教育効果というものを狙ったプログラムと言うことができる。内科・小児科・整形外科・皮膚科(外来)ができるようになれば、医師としてどんなところへ行っても困ることはないと言われる。厚生労働省サン、もう少し考えてはもらえないだろうか。

 次回は研修医のことを誰よりも把握してくれている裏方の御法度を紹介する。

ポイントの整理

  • (1)「自由なプログラムです」という宣伝文句は無視せよ
  • (2)プログラムの最初の1ヶ月目は新人研修期間である
  • (3)ローテートの順序に指定があるプログラムをチェックすべし
  • (4)内科・小児科・整形外科・皮膚科の外来力を高めるプログラムになっているかをチェックするべし

著者略歴

安藤 裕貴

所属:名古屋掖済会病院救命救急センター(2016年11月現在)

「人の命は地球よりも重い」そんな命を支える人になりたいと、医学を志した初心を忘れられず京都大学工学部中退。再受験にて富山大学医学部入学。平成20年、同卒業。初期研修中に「研修病院選び方御法度」(三輪書店)を出版。救急の現場で研修医指導をしながら、よりよい研修とは何か探り続ける。

安藤医師

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