【研修病院選び方 御法度・第12回】大学病院より市中病院のほうがイイ!? | m3.com 研修病院ナビ

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研修病院選びかた御法度その(3) 大学病院より市中病院のほうがイイ!?

 これまでの研修病院のマッチング結果を見ると、徐々に市中病院>大学病院と差が出てきているのがわかる。「やっぱり研修するなら大学病院より市中病院だよな」と思えるのだが、これがそう単純な話ではない。それぞれに強烈なメリット・デメリットが存在するため、それを天秤にかけてより自分に合った研修先を選ばねばならない。

これが大学病院での研修のメリットだ

 大学病院には沢山の医者がいる。初期研修が終わったばかりの後期研修医もいれば、講師、助教のように医局の中心、最前線で働いている医者、大学院で研究をしながら当直だけは診療に参加する医者までいる。この豊富で層の厚い指導医の数こそ、大学病院での研修のメリットである。

 人が多いということはそれだけ扱える分野が広いということであり、困ったことがあっても質問をすれば誰かが必ずなんらかの反応を示してくれる環境であるということだ。研修医時代に上級医に質問をしたところ、どうも内容がマニアックだったようで、その場は口頭での簡易レクチャーだったが、翌朝そのもととなった論文をサッと手渡されたときは感動すら覚えたものだ。また、それぞれ得意分野を持つ医師から、一流の指導を受けることができるのも魅力だ(※但し教え方上手であればという前提付きだが)。若手医師の扱いにも歴史があり、どこでどういう研鑽を積ませることが適しているか、どこにツマヅキやすいのかということにも慣れていることが多い。研修医時代に何回も学会発表の機会を設け、アシストしてくれたりもするアカデミックな姿勢は、なかなか市中病院には越えられない壁である。

教えられ教える立場

 大学病院での研修のメリットは学生の存在にあることも強調しておきたい。研修医というのは病院の中では常に教えられる立場ということになるが、学生がいると、たとえ一年目の研修医でも学生を指導する立場も与えられる。いや与えられなくとも積極的に教えることができる環境に身を置くことができる。

 ラテン語でDum docent discount、“人は教える間学んでいる”、英語でTo teach is to learn、“教えることは学ぶこと”と訳された名言がある。「研修医一年目で学生の指導なんてできないです」という人もいるかもしれないが、そんなことはない。病院実習をしている学生にとって、一番近い存在は研修医なのだ。それも2年目よりも1年目のほうが学生が何に疑問を持ちやすいかにより気づくことができる。国試のために勉強する膨大な内容をイメージして欲しい。知識の次元が違うのだから教えられることは多々あるはずだ。前の晩に読んだ本の一節を教えるだけで記憶の蓄積にも繋がるだろう。

市中病院研修のメリット

 市中病院といっても、規模や地理的条件などさまざまな要因が絡み端的に比較するのは難しいので、ここでは一般論で語らせてもらう。市中病院での研修のメリットは研修医が主役の救急外来研修にある。これまで何度も同じ話をしているので割愛するが、Common diseaseを何度も経験し、対応する力を身に付ける研修は、一般的に救急外来研修が充実していない大学病院にはないメリットだ。救急車での搬送数というミニマムな数字だけを見ても差があるが、大学病院での救急搬送症例は、大学病院自体のかかりつけ患者か地域病院からの紹介による転院搬送がほとんどだ。救急外来で待機していてもすぐにメインとなる診療科が呼ばれ、研修医は考えることなくデータ入力や検査オーダーなど事務作業に終始する。最初から自分で考えて診療していくスタイルとは大きく違う。

 もちろん大学病院でER型救急を行っているところもあり、一概には言えないことを付け加えておく。大学病院に充分な症例を経験できるER型救急研修があれば鬼に金棒なのだが…。

市中病院研修のデメリット

 実は市中病院での研修のメリットというのは救急外来研修にしかない。断言すると、一部の例外的なスーパー研修病院やスーパードクター達から怒られてしまうが、全国の多くの研修病院は、救急もそれ以外もスゴイなんてことはない。指導医の数、施設の規模、学習や指導を受ける機会、図書や教育資源へのアクセスなどなど、大学病院にはかなわないのだ。

 せいぜい建物がキレイだとか、食堂がおいしいとか、給料がいいとか教育とは直接無関係なところでメリットをアピールするのが関の山なのだ。本当のところはこれが実情。

 そのデメリットをひっくり返すほどCommon diseaseを自ら経験できる環境というのは、市中病院でもペイシェント・ボリュームがあり、経験した症例をそのままにせず、上級医がチェックしたりするシステムがある一部の病院となってしまうだろう。

 ちなみに給料がイイ研修先を選ぶと、研修中に「お前らは金が目当てでこの病院に来たんだろう!」と露骨に言われることに耐えなければならないそうな…。給料もよくて研修の中身が良ければ最高なのにね。

ポイントの整理

  • (1)指導医の数・層の厚さ、施設規模、教育資源へのアクセスが大学病院での研修のメリット
  • (2)「教えることは学ぶこと」を実践できる病院を選ぶべし
  • (3)市中病院のメリットはまだまだ救急外来研修にしかない!?
  • (4)市中病院ではペイシェント・ボリュームや経験症例のチェックシステムの有無を調べるべし

著者略歴

安藤 裕貴

社会医療法人 杏嶺会 一宮西病院 総合救急部救急科 部長

「人の命は地球よりも重い」そんな命を支える人になりたいと、医学を志した初心を忘れられず京都大学工学部中退。再受験にて富山大学医学部入学。平成20年、同卒業。初期研修中に「研修病院選び方御法度」(三輪書店)を出版。救急の現場で研修医指導をしながら、よりよい研修とは何か探り続ける。

安藤医師

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