【研修病院選び方 御法度・第9回】ワクワクどきどきER型救急研修 | m3.com 研修病院ナビ

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ワクワクどきどきER型救急研修

 ER型(北米型)救急というのは、あらゆる患者をまず診せていただきます!救急車は断りません!というスタンスをとった救急外来のことだ。一般の人や学生からすると「救急外来って誰が受診してもいいものじゃないの?ER、ERって何をそんなに熱くなっているの?」と思われるかもしれないが、そうではないのが実情なのだ。

 勉強が進んでいる人は知っているだろうが、日本の医療施設の救急システムは1次救急施設から3次救急施設に分けて格付けされている。簡単に言えば、1次とは入院が必要ではない軽症患者が来る施設、2次は入院可能な施設、3次は複数科による集中治療が可能な施設となっている。有名な大きな病院というのは3次救急病院であることが多いが、細かい要件があるため、大きくは救命救急センターがあるかないかで判断すると分かりやすい。

現実と離れた救急病院の格付け

 この格付、「なんだうまいこと分類してあるな」と思った人もいるかもしれないが、あくまで病院側(行政側)による分け方だ。実際に患者が発生したときには、この分け方は実は全く意味がなくなってしまう

 たとえば「めまい」で動けない患者が発生したとしよう。この時点で診断や重症度は分からない。ちょっと動けるからと患者が診療所(=1次救急施設)を受診したところ、心電図検査でST上昇を認め心筋梗塞だった!なんてことは山ほどある。腹痛で七転八倒、これだけ痛がっているなら重症に違いない!と患者も家族も救急隊も思っていた人が、診断は便秘で浣腸して歩いて帰宅なんてこともある。わざわざ救命救急センターに搬送されてしまった日には赤っ恥かいた、なんてことにもなりかねない。

 患者は小さな病院よりも大きな病院が良かろうと思って、3次救急施設に押し寄せる。本来重症ばかりを診て治療しなければならないとされている施設の使命はなかなか果たせず、救急医は息が切れてヤメてしまう、ということも起きている。

ER型救急外来の仕事

 一方ER型救急外来は、どんな患者でもまず診断を付け、重症度を判定し、必要に応じて専門診療科にコンサルテーションする。軽症者はそのまま帰宅させるから、専門家の手を煩わせないし、疲労も防げる。入院が必要な患者には初期対応を行い専門家へと引き継ぎ、重症患者には蘇生を行いながら専門診療チームとともに活動する。しかも内科、外科を問わないだけでなく、魚の骨が刺さった、耳に虫が入った、目が見えにくくなった、変なぶつぶつができた、子供が熱を出した、指をケガした、足をくじいたなどなど、大学で学んだ全ての診療科のあらゆる患者を診療する機会があるのだ。

 患者からすれば適切な初期対応後に必要に応じて専門家の診察が受けられ、病院にいる専門家たちも不必要に夜中に呼ばれることが減り、研修医は幅広い知識と多くの診療経験を患者から学ぶことができる。ER型救急がプライマリー・ケアの基本的な診療能力を身に付けることを主眼としている初期研修にも相応しいのは言うまでもないのだ。

似て非なるER型救急

 ERを北米型救急と言いたいのか、ただ単に救急室の意味で使っているのか、はたまた最近の流行なのか、なんでもかんでもERと言っている病院がある。どんな患者でも受け入れていればER型なのだろうが、夜間ERには“自称ER”が3種類あるので知っておこう。(前回触れたが本来ERとは救急室の意味しかないので悪しからず)


Type1. 各科当直医+研修医で当直している

Type2. 救急医+各科当直医+研修医で当直している

Type3. ER型救急医が常駐し研修医とともに当直している


 ER型救急医に明確な定義はないのだが、ここでは重症軽症を問わず、診療科を問わず、初期対応を専門とする医師と思っていただきたい。救急医とは、ここでは夜間に救急車だけを請け負っている医師のこと。各科当直医とは内科系当直医+外科系当直医という体制が多い。

Type1. 各科当直医と研修

 Type1の場合、研修医が外来患者を診療して入院が必要、あるいは判断に困ると思ったら、内科系なら内科当直医、外科系なら外科当直医に相談することになる。内科系当直医は循環器内科医の日もあれば呼吸器内科医の日もある。外科系当直医は消化器外科医の日もあれば整形外科医や耳鼻科医の日もある、といった形だ。

 そうなると困ったことになるのだ。循環器内科が専門の先生が内科当直をしている日に脳梗塞の疑いがある患者が来たとき、研修医はどのような指導を受けることができるだろうか想像してみて欲しい。その先生の幅にもよるのだが、自分の専門範囲であれば詳しく、優しく教えることができるのは想像に難くない。専門外の神経内科のことはちょっと分からないので、「うん、わかった、入院させとく!」で話が終わってしまわないだろうか。泌尿器科が外科当直の日に虫垂炎を疑う患者が来たらどうなるだろう。診断基準やスコア、経過観察の方法など患者への説明や研修医への適切な指導がなされるだろうか。全てをエビデンスエビデンスと大合唱しなくとも、ある程度疫学データに基づいた診療法を研修医に教え、診療内容や患者教育に反映させることができるかと言われたら、なかなか難しいだろう。型はER型でも中身があらゆる患者をできるだけ適切に診るER型になっていないのだ。


手前味噌のようなER型救急医については次回につづく!

著者略歴

安藤 裕貴

所属:名古屋掖済会病院救命救急センター(2016年11月現在)

「人の命は地球よりも重い」そんな命を支える人になりたいと、医学を志した初心を忘れられず京都大学工学部中退。再受験にて富山大学医学部入学。平成20年、同卒業。初期研修中に「研修病院選び方御法度」(三輪書店)を出版。救急の現場で研修医指導をしながら、よりよい研修とは何か探り続ける。

安藤医師

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