【研修病院選び方 御法度・第8回】救急がイイ病院がイイ! | m3.com 研修病院ナビ

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救急がイイ病院がイイ!

 前回に続き今回も「救急がイイ病院がイイ!」のかについて検証していく。「タイプ①初期対応はカルテ入力だけ」はこちらを参照されたい。

タイプ② 救急車はタッチさせてもらえない

 これはどういうことかというと、研修医が当直中に対応するのは自分で救急外来まで来ることのできた患者=ウォークインだけというパターンだ。この研修方法には一理あるかに見える。自分で病院までたどり着けるということは、全身状態がそれほど悪くないハズだと推測できるからだ。そういった患者であれば研修医が(あるいは研修医だけで)対応しても、そうそうリスキーではないと考えているのだ。タイプ①に比べれば、自分で診察をして方針を建て、それを上級医にコンサルトして、というステップを踏むことである程度の訓練になる。しかし、これは前提が間違っているということを知っておかねばならない。救急外来に来るウォークイン患者の約10人に1人が入院が必要で、100人に1人が緊急手術などが必要な重症だと言われている。研修医が当直で年間1,000例診ている病院なら1年に10回恐ろしい経験をすることになるのだから、ウォークイン患者が全て軽症で研修医にとって安全というのは土台間違っている。10回のうち何回安全に対応できるだろうか。重症患者は、「この病歴、このバイタルサインならすぐに検査しなければ!」と脊髄反射で見抜くものであるということを経験し、訓練しておかないと、いざというときに体が動かず対応ができない。

タイプ③ ウォークインはタッチさせてもらえない

 このタイプは②と逆で救急車対応しかしない。病院によっては、ウォークイン患者は内科系当直医と外科系当直医に任せて、救急車対応だけを上級医とする(病院によっては1年目と2年目だけ)というところもある。

 とある救急医は「重症を診ていれば軽症を診れるようになるんだよ」と自慢気に語っておられたが、これは先ほどと全く逆のことが言える。

 大事なことなので繰り返すが、研修医のときに是非とも身につけて欲しいのは、軽症患者の中に含まれる重症患者の見抜き方である。そのためには多数の軽症患者を経験しながら、病歴や身体所見、バイタルサインだけで、重症な疾患の影を探り当て、常に警戒するという訓練を何度も何度も繰り返さなければならない。救急車で運ばれてくる患者の中には確かに軽症患者も含まれる。しかし、多くの場合救急車で来た患者には何も考えずに採血をし、点滴を落とし、レントゲンやエコー、CT検査と検査の絨毯爆撃が行われる。「そんだけ検査やれば誰がやっても何か見つかるに決まってるでしょ!」と言いたくなるが、それを言うと「この患者は救急車で来ているのだから見逃すわけにはいかないのだ」という反論が聞こえてくる。ふむふむ、確かに日本人の国民性として医療に完璧さを求めるのはよくよく理解できる。その国民性を理解したら確かにと納得せざるを得ない気分になる。しかし、検査の絨毯爆撃だけやっていても、臨床推論を鍛えることはできないし、検査1つ1つについて検査前確率や、感度、特異度を気にしないようになってくる。

教わらない検査結果のウラ側

 学生のころと医者になってからとで、全く違う感覚を持つことになったものの1つが検査だ。学生のときは国家試験の対策本や試験問題を見ていると、頭痛と発熱と嘔吐が揃ったら髄膜炎を疑って、髄膜炎の診断には白血球やCRPの上昇に腰椎穿刺で細胞数の増加などがあれば髄膜炎だと分かる、なんて書いてあるし、そう思っていたのだが、現実には当てはまらないことが多々ある。白血球なんてゲーゲー嘔吐していれば18,000/μLぐらいまですぐに上昇するから、「これが上昇しているから細菌感染があるんだ!」と思うことなんてできない。CRPが上昇するといっても程度は様々で、原因特定の役には立たない(特異度が低い)。どちらも検査の時点で上昇していないことなんて山ほどあるから、上昇する前に検査して「CRPが1.2mg/dlぐらいなら風邪だね」なんて言うことはできない。本当は注意深い問診や身体所見、バイタルサインから疾患を疑い、どんな検査が有効かを考えるのだが、それをじっくり教えるのに絨毯爆撃検査をやっていては、身につくハズがない。救急車だけ診ていればよいなどとは、現場感覚や臨床力を身に付けるという点では大外れなのが分かるだろう。

タイプ④ 全部初期対応する

 患者が自分で来院するウォークインも救急車も一通り研修医からファーストタッチをするタイプの当直が④である。一般にこういうタイプの救急外来をER型救急なんて呼んだりする。ERというのはEmergency Roomの略だから、本来はただの救急室って意味だが、これはテレビドラマの影響が多分にあるようで、日本の従来の分け方で言う1次救急から3次救急に至るまで分け隔てなくどんな患者でも診ますよ!という北米型救急のことを指している。患者さんを目の前にするまでどんな疾患を抱えているのか分からない、次々に目にするのが、 ― たとえ感冒でも人によってバリエーションがあるので ― 初めて診る患者ばかりのワクワクどきどきする当直体制をとっている病院のことだ。


ワクワクどきどきのER型救急研修については次回!

著者略歴

安藤 裕貴

所属:名古屋掖済会病院救命救急センター(2016年11月現在)

「人の命は地球よりも重い」そんな命を支える人になりたいと、医学を志した初心を忘れられず京都大学工学部中退。再受験にて富山大学医学部入学。平成20年、同卒業。初期研修中に「研修病院選び方御法度」(三輪書店)を出版。救急の現場で研修医指導をしながら、よりよい研修とは何か探り続ける。

安藤医師

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